【図解とイラスト付き】太陽光発電の仕組みや役割は?設置の種類も解説
電気代の削減やカーボンニュートラルの実現、災害対策などの一環として、太陽光発電の導入を検討している企業も多いでしょう。
太陽光発電が自社にとって有益なものであるかを判断するためには、その仕組みや役割を正しく理解しておく必要があります。
そこで本コラムでは、太陽光発電の仕組みや役割、特徴を図やイラストを交えながらわかりやすく解説します。
併せて、産業用太陽光発電の4つの設置形態も事例とともに紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
【図解とイラストで簡単に理解】太陽光発電の物理的な仕組みや役割
産業用太陽光発電は、主に「太陽電池モジュール」「パワーコンディショナ」から成り立っています。
まずは、それぞれの物理的な仕組みや役割と、その他に必要な設備を確認しておきましょう。
太陽電池モジュールの仕組みと役割
太陽光発電は、「光電効果」という現象を使った発電方法です。物質によっては光が当たるとその物質から電子が外に飛び出す(叩き出される)場合があり、この現象を発電効果といいます。
太陽光発電の中で太陽光エネルギーを電気に変換する役割を果たすのは、太陽電池モジュールです。現在よく使われているのは、シリコン系太陽電池モジュールで、電気的な性質の異なる2種類(p型/n型)の半導体が貼り合わされています。
2つの半導体の境目に光エネルギーが加わると、n型半導体に「マイナスの電気を帯びた電子」が、p型半導体には「プラスの電気を帯びた正孔」が引き寄せられ、電気の流れが生じます。
そこに電線やモーターのような負荷をつないで電気を外部で利用するのが太陽電池モジュールの基本的な原理です。
パワーコンディショナの仕組みや役割
パワーコンディショナは、太陽電池モジュールで得られた直流電力を交流電力で使えるよう変換する装置です。
電力会社から送電されているのは交流電力のため、ほとんどの電化製品は交流電力でしか使えない仕様になっています。つまり、太陽電池モジュールでつくられた自家消費するためには、直流電力を交流電力へ変換する必要があるのです。
また、パワーコンディショナには発電量や出力を調整することで安全に、安定的に電力を供給する「系統連系保護装置」という機能も備わっています。
もしも太陽光発電に故障などがあった場合にも、パワーコンディショナが直流電力を遮断し、電線に流れるのを防ぎます。
その他の産業用太陽光発電に必要な設備
太陽光発電が働くためには、太陽電池モジュールとパワーコンディショナ以外にもさまざまな設備が必要です。主なものには、以下のようなものが挙げられます。
- 太陽電池アレイ:架台に取り付けられた複数の太陽電池モジュール群
- 太陽電池架台:傾斜角を持たせて太陽電池モジュールを取り付けるための架台
- 接続箱:太陽電池モジュールから出る配線をひとつまとめるボックス。パワーコンディショナと一体型のものもある
- 分電盤:電力会社から送電される電力を建物内に分配する装置
- 買電用受変電設備:電力会社から送電される電力を受電し、必要に応じて低圧の動力電源や電灯電源に変換する装置。低圧受電の場合には設置されないケースもある
- 買電用積算電力量計:電力会社からの買電量を測定するための電力量計
- 売電用積算電力量計:太陽電池モジュールで得られた電力の売電量を測定するための電力量計
- PAS:高圧気中負荷開閉器/(架空引込方式の場合)配電線路の分岐・区分用開閉器
そもそも太陽光発電とは?特徴や注目される理由
太陽光発電は、クリーンで枯渇することない再生可能エネルギーを活用する発電方法です。発電時に二酸化炭素や騒音、振動などが発生する心配もないことから、環境にやさしい発電設備でもあります。
また、多様な場所に設置可能で、設置場所の広さに合わせて自由に設備の規模を決められるため、自社の状況や環境に合わせて導入しやすい点も魅力でしょう。蓄電池などを併用すれば、非常用電源としても活用できます。
近年は、SDGsやカーボンニュートラル実現への取り組みも企業の社会的責任のひとつと考えられるようになってきました。太陽光発電の導入は、社会貢献と企業イメージの向上にもつながる施策となりつつあります。
売電の仕組み
太陽光発電で得られた電気は、FIT制度(固定価格買取制度)を利用して売電することも可能です。
FIT制度とは、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電気を、一定期間、一定価格で電力会社に買い取ってもらえる制度です。売電価格や買取期間は発電容量によって異なり、年度ごとに見直されています。
参考までに、2024年度における50kW以上(地上設置)の売電価格は9.2円、買取期間は20年です。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 買取価格・期間等(2024年度以降)
売電方法は、太陽光発電によって得られた電力を自社で活用したのちに余った電力を売る「余剰売電」と、発電量のすべてを売る「全量売電」の2種類に大別されます。
電気代が高騰傾向にある今は、電力の自家消費で電気代を抑えられる余剰売電がおすすめです。
設置形態の種類は?事例を交えて解説
太陽光発電は多様な場所に設置できる点が魅力だと紹介しました。ここでは、太陽光発電の代表的な設置形態を4つ、事例を交えながら紹介します。
地上設置型
地上設置型とは、遊休地などに太陽電池架台を立て、太陽電池モジュールを設置する形態です。野立てとも呼ばれます。
地上設置型の事例として紹介するのは、北海道富良野市の水処理センターでの導入事例です。
富良野水処理センターは、年間の電気代が約2,000万円、CO2排出量は610tと市の施設のなかでも双方が非常に多い点が課題でした。そこで、北海道庁経済部が市町村の再エネ導入を支援する事業(エネルギー地産地消スタートアップ支援事業)をきっかけに、地上設置型の太陽光発電を導入しました。
今では、電気代の変動リスクを回避し、80t/年のCO2排出量削減を達成しただけでなく、遊休地の有効活用や環境教育の啓発においてもモデルケースとなっています。
参考:環境省 事例集
水上設置型
水上設置型とは、ため池などに太陽電池架台を立て、太陽電池モジュールを設置する形態です。ここでは、千葉県市原市の山倉ダムにある日本最大級の水上メガソーラーを紹介します。
千葉県は、東日本大震災時に深刻な電力不足を経験したことから、エネルギーの分散確保や地域経済の活性化を目的とする自然エネルギーの推進プロジェクトチームを立ち上げました。このプロジェクトの最大案件とされたのが、山倉ダムを利用した太陽光発電事業です。
ダム湖の水面の30%に設置された軽量フロートは、移動しないよう約500本のアンカーでダム底に固定されました。その上に並ぶ約5万枚の太陽光モジュールの最大出力は13.7 MWにも達するといいます。
参考:公益財団法人自然エネルギー財団 自然エネルギー活用レポートNo.20
屋根設置型
屋根設置型とは、建物などの屋根に太陽光発電施設を設置する形態です。近年、多くの施設や事務所、工場などの屋根に設置されているケースを目にするようになりました。
株式会社新昭和が千葉県袖ヶ浦市にある温浴施設の屋根上に太陽光発電を設置したきっかけは、2019年の台風による停電でした。太陽光発電を非常用電源として活用すれば、万が一の際に地域住民の役に立つと考えたのです。
現在、同社は袖ヶ浦市と協定を結び、災害発生時には温浴施設を避難所として無償提供することを約束しています。太陽光発電の導入で災害対策に取り組むことにより、企業価値や地域の環境意識の向上につながった事例です。
営農型(ソーラーシェアリング)
営農型(ソーラーシェアリング)とは、農地に支柱を立てて上部空間に太陽電池モジュールを設置することで、農業を営みながら太陽光発電を行う形態です。
農業収入に加えて電気の自家消費や余剰電力の売電を行うことで、農業経営が改善すると期待されています。
高知県四万十町にある集落営農組織「株式会社サンビレッジ四万十」は、営農型太陽光発電の導入によって農業経営が安定しただけでなく、地元での雇用・就農の機会創出など地域活性化につながった事例です。
太陽電池モジュールの遮光条件下での栽培経験がなかったため、地元の高知大学にアドバイスをもらいながら事業計画を策定したといいます。太陽光発電が、地域の文化・伝統を守ることにも貢献している事例です。
まとめ
多様な場所に設置可能な太陽光発電は、自社の状況や環境に合わせて取り入れやすい再生可能エネルギーです。電気代の削減や災害対策につながるだけでなく、地域への貢献や企業価値の向上も見込めます。
太陽光発電を安全に導入・運用するためには、まずはその仕組みをしっかりと理解する必要があります。ただし、より効率的に、長く運用するには、信頼のおける業者との協力も欠かせません。
リープトンエナジーは、高品質な太陽光発電を提供し続ける日本生まれの太陽電池モジュールメーカーです。世界中の太陽光発電メーカーを評価する「Tier1」や「PVEL」などの第三者認証機関にも、その品質の高さが認められています。